韓国の伝統舞踊
		韓国では、他の地域と同様に部族国家の時代から豊作を祈るなどの農業に関する行事や、天地神に祭祀を捧げ集団で踊るなどの習慣があり、それが現在でいう舞踊に繋がりました（日本では神楽、田楽などがその例）。朝鮮半島では高句麗時代の壁画に人々が踊る様子が描かれており、それ以降も様々な文献で「舞踊」の記録が残っています。李氏朝鮮時代に入り、舞踊は「宮中舞踊」と「民俗舞踊」に分かれ、それぞれ発展していきました。宮中舞踊は宴会などで王侯貴族を楽しませる華やかなものや、祭礼儀式の際に行われるものなど様々な舞踏が誕生していきました。庶民の間では仮面劇や能楽など華やかさよりも、楽器を掻き鳴らしたり、貴族階級を皮肉ったりとユーモラスで力強い舞踊が発展していきました。

扇の舞：プチェチュム			太平舞：テピョンム
	宮中舞踏を基本として１９５０年代に創作された舞踊。華やかな宮廷衣装を身につけ、扇を使って花や波を華麗に表現する群舞が特徴。韓国を代表する舞踏として、舞台などで目にすることができます。			太平舞は国と国王の平和と安定を願って行われた民俗舞踏で巫俗舞踊に影響を受けたものと言われます。複雑な足使いが特徴で太平舞を舞う舞踏家は高度なレベルが必要とされます。重要無形文化財に指定。

僧踊：スンム			鶴舞：ハンム
	僧踊は京畿道（ギョンギド）と全羅道（ジョルラド）周辺に伝承されている民俗舞踏で、長い袖、白い頭巾が特徴的な仏教色の強い踊りです。非常に芸術性が高いと言われ、ユネスコのアジア太平洋地域無形文化遺産（芸能）に登録されています。			鶴はその気高い姿と優雅な動きで韓国の人々に愛されている鳥。幸運を招くと言われる鶴の動きを表現した宮廷舞踏で、主に宮廷で演じられてきましたが、一般庶民の間でも演じられたと言われます。ユネスコのアジア太平洋地域無形文化遺産（芸能）に登録されています。

処容舞：チョヨンム			剣舞：コンム
	災厄を追い払い幸運を招く舞として１０００年以上の歴史を持つ宮廷舞踏。新羅時代に歌で疫神を追い払ったという処容郎の物語を基にした舞で、５人の踊り手がユーモラスな仮面をつけて軽やかに舞います。重要無形文化財に指定。			剣舞とは、新羅時代に百済王宮に忍び込み剣の舞を披露しながら隙をついて百済王を討ち取った新羅の少年にちなんだ舞。元々は仮面民俗舞踏だったものが宮廷で宴戯され、発展していったもの。武舞ながらも柔らかな動きが美しく、晋州地方の剣舞は重要文化財にも指定されています。

農楽：プンムルノリ			河回別神グッ仮面劇：ハフェビョルシングッタルノリ
	農耕生活の中で欠かすことのできない舞踏として一般庶民に最も馴染みのある農楽舞踏。農楽は全国で踊られてきたものだけに地域によって形式が異なり、手に持った楽器をかき鳴らしながら踊る、帽子につけた飾りを利用して踊るなどそれぞれ異なった特徴をもっています。現在も民俗村やお祭りなどで農楽を見ることができます。			朝鮮時代の集落の姿を残した村、河回村（ハフェマウル）に伝わる韓国最古の仮面劇。その時代の世相や王侯貴族を風刺したテーマを面白可笑しく演じられます。また高麗時代中期に製作されたと伝わる9つの仮面が現存し、全て国宝にも指定されています。重要無形文化財指定。

サルプリチュム			太鼓の舞：チャングチュム
	サルプリチュムは長い布を使って踊る韓国で最も頻繁に演じられる伝統舞踏。朝鮮時代の妓生（キセン）によって創られ、内に秘めた感情を一つ一つの動作に静かに表していく芸術性の高い踊りと言われています。重要無形文化財に指定。			伝統楽器のチャング（太鼓）を叩きながら足で独特なリズムを取る舞踏。チャングのリズムと躍動的な動きが特徴。日本の和太鼓の舞とはまた違った魅力があります。

パンソリ			サムルノリ
	ユネスコの世界無形遺産にも登録された韓国伝統の民俗芸能。風刺や悲恋といった内容が歌い手と打楽器の奏者による演奏によって演じられる。１つの演目を演じるのに長い時間を要し、人気演目の一つ「春香伝」では８時間以上の長丁場となります。			サムルノリは韓国の伝統楽器を用いた農楽を基本とした現代音楽。朝鮮半島に古くから伝わる農楽のリズムを体系化し、現代的にな舞台用の演奏として確立していきました。農楽と混同されることもありますが、農楽とはまた異なるものと言われます。